先日、着尺が一本織り上がりました。糸を紡ぎ始めてから約一年掛かって織り上げた布です。秋にはお渡ししたかったのに随分お待たせしてしまいました。糸の細さと布の質感について考え細かなチャレンジをしたこの布は、ご注文いただいた方の姿形お人柄が分かっている事と相まって、プレッシャーと新たなチャレンジに対する緊張感が入り混じり、祈るような気持ちで織り上げました。色んなことがあった一年間の生活と共に、綿が糸になり色づき、布になっていったと思うと、感慨深いです。
織りあがった後は、解放感でぼんやりしてしまうのかなと想像していましたが、淡々と次の一本に掛かっています。次の一本があるお陰で、ぼんやりとしなくても良いのかもしれません。そんな訳で、今夜も糸に向き合っています。道具の古さもあるでしょうが、ガラガラと勢いよく経糸を巻きました。田舎の一軒家だからこうやって夜中でも思いっきり仕事ができるんだな、と環境に感謝しています。