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切り抜き詳細
発行日時
2012-8-30 14:24
見出し
ちいさな手とシャボン玉
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=3280
記事詳細
古い街なみが残るおまつりに行ってきた。 今年はシャボン玉を1万個飛ばすと言うので楽しみに行ってきた。 その道に一歩足を踏み入れると、 子どもの頃に母が作ってくれたような涼しげなワンピースを着た女の子が足もとをさーっと、 走り抜けていった。 絶え間なく機械から生まれてくるシャボン玉は、 七色に回転しながら、 曇り空から時々射す日にきらきら跳ね返り、 古い街なみを空にあがっていく。 空に手を差し伸べて、 小さな子どもがシャボン玉を掴もうとする。 木造の家が立ち並ぶ通りで、 床几に座ってくつろいでいる大人たちは、 談笑しながら団扇を使い、 あの家の曲がり角から小さな自分が飛び出してくるのを探しているようにみえる。 春彦君と秋彦君の兄弟も、 あんちゃんやともちゃん、 おみそのみち君。 そして、 お兄ちゃんも。 あの頃、 真っ暗になるまで外で遊んだ近所の子どもたちが、 嬉しそうに射的をして、 舌を赤や黄色にしながら、 かき氷をほおばっている。 毎日カンカン照りでセミが鳴いてて、 学校に行かなくてもよかった夏休みは、 子どもの頃は年に1回やってくる天国だった。 あの頃の子どもたちは、 全く習い事なんかしてなくて、 子どもは子どもらしく、 子どもなりにするべきことやしたい事が毎日たくさんあった。 「暇だ」 なんて考えた事もなかった。 昭和の子どもたちが今より幸せだったかどうかはわからないけれど、 毎日遊ぶことしか頭になかったあの時、 美しい日々だったように今更ながら想う。 (土性里花・グループPEN代表)