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切り抜き詳細
発行日時
2012-7-30 10:51
見出し
食べ物の記憶
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=3252
記事詳細
七月の一週に義母、 三週に母の一周忌を済ませた。 「一年が過ぎるのが早いねぇ」 などと嘆きつつ、 普段は会えない親族が一緒に食事をして、 故人の思い出話をしたり、 近況などを語りあう。 悼みつつ、 互いに明日への元気も貰えたように思う。 丹波での母の一年記念会でも、 牧師さんによる式次第が終了したあと、 親族のみで食事をしながら、 母の思い出や近況を話し合った。 西瓜が大好物だった母の、 豪快な食べっぷりだとか、 紫蘇と酢の効いたおにぎりを作って待っていてくれた夏休みの話などが孫から、 甥や姪からも、 ハイカラな物を食べさせてもらった話、 実家へ行っても慌しく帰ってしまう母のせっかちな一面など、 どれも肯けた。 板の間や廊下の雑巾掛けを、 汗を拭きながらして、 そのあと西瓜を食べていた母の幸せそうな顔を思い出す。 西瓜とトマトが大好きだった。 料理など大ざっぱな母なのに、 なぜかトマトだけは皮をむいていた。 そのせいで私も、 食べられないことは無いが、 皮をむいた方が好きだ。 そのくせ、 西瓜の種は丹念に取らずにかぶりつき、 種ごと食べてしまう。 「なんで、 種も取らずにそんなに慌てて食べるの?」 と聞くと、 母ではなく父が 「子どもの頃に、 はよう食べんと兄貴に取られてしまうさかい、 それが今でも癖になっとんのやないこ」 と、 からかい気味に答えていた。 「そんなことはないけど、 西瓜は、 こうして食べるのがおいしいんやわね」 と、 食べていた母の姿が、 つい昨日のように目に浮かぶ。 この世にいなくなっても、 食べ物で思い出してもらえたら幸せかも。