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2015年12月13日08:36
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淡水魚が好き
幼いころから淡水魚の飼育が好きで、金魚以外にも近くの川で採集した川魚を飼っていたことがあった。暇があれば図鑑を見て生態や見分け方を知り、今でも気が向けば手に取って眺めている。身近な川の生き物が、どのように暮らしているのか興味があったからだ。
淡水魚というと地味な体色をしたイメージがあるが、初夏に婚姻色を帯びたオスのオイカワは美しく、熱帯魚にも引けを取らない。中国が原産で、二枚貝に産卵することで知られるタイリクバラタナゴのオスも、虹色の光沢が鮮やか。残念なのは日本固有種のニッポンバラタナゴ。タイリクバラタナゴとの間で交雑が進み、混血という形で絶滅危惧種になっていることだ。
私がこれまでに近所で採集した多くはコイ科で、ヤリタナゴ、カワムツ、ギンブナ、モツゴ、ツチフキなど。なじみ深いが、絶滅危惧種にも指定されているメダカも確認できた。意外にも多くの種類の魚が息づいていることに驚く。
そもそも川に行く機会が少なく、淡水魚をまじまじと目にする機会は決して多くないが、水の中には確かな営みがある。(田畑知也)
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2015年12月13日08:35
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篠山の可能性を探る 社会学者ら8人執筆
社会学者ら8人が執筆した本「成熟地方都市の形成―丹波篠山にみる『地域力』」が福村出版から発行された。合併自治体の先駆けモデルになった篠山市を15年前から調査研究した成果をまとめたもの。都市化や産業化の進展の末、地域の個性や文化が失われ、若者を引きとめる魅力を喪失する流れが全国の地域に見られるなか、篠山にはその流れを止める可能性があると指摘。「篠山市がめざす『なつかしい明日』、つまり地域が過去から積み重ねたものの価値を未来につなげることにひとつの可能性がある」としている。このほか、さまざまな課題を明らかにし、提言を寄せている。
編著者は藤井和佐岡山大学大学院教授、杉本久未子大阪人間科学大学大学院教授。定価3400円(税別)。
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2015年12月13日08:35
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花描いた25点展示 教室生が「彩り展」 ...
町家ギャラリーるり(柏原町柏原、0795・72・1608)で12月19日まで、同ギャラリー水彩画教室生による展示会「彩り展」が開かれている。午前10時―午後5時(最終日は4時)。3年ぶりの開催。
教室生9人が、新作を中心に花や植物をテーマにした水彩画や油絵25点を展示。はがきサイズから60号の大作までが並ぶ。中には11月に開かれた「神戸新世紀秋季展」で県芸術文化協会賞を受賞した土田綾子さん(柏原)の月下美人を描いた作品や、同展で佳作賞となった酒井るい子さん(同)のキャンバスいっぱいにヒマワリを描いた作品も展示されている。
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2015年12月13日08:34
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関西選抜で台湾へ 丹波地域から4人 中...
一般財団法人「日本リトルシニア中学硬式野球協会関西連盟」はこのほど、27日から台湾で開催される「第13回日台国際野球大会(阿里山盃)」の関西選抜選手25人を発表し、丹波地域からは、兵庫北摂リトルシニアの圓谷颯太君(14)=篠山中2年=と田村颯太君(14)=柏原中2年=、兵庫北播リトルシニアの芳賀太陽君(14)=丹南中2年=、三田リトルシニアの北山康生君(14)=丹南中2年=の4人が選出された。
大会では、台湾の中学3年生を中心にした9チームと対戦する。
圓谷君は右投げ右打ち。普段は捕手と4番を務めている。身長178㌢の体格を生かした長打力が特長で、強豪の神戸中央戦でホームランを放つなど活躍している。
田村君は右投げ左打ち。今年5月からの打率は3割9分8厘と絶好調だ。兵庫北摂では遊撃手を務め、チームメートの園谷君との3番、4番コンビも光る。
関西選抜で主将を務める芳賀君は右投げ左打ちで、兵庫北播でも主将を務める。普段は1番バッターでショート。走攻守揃った万能選手。
北山君は左投げ左打ち。三田では投手と外野手を務め、50㍍走6秒半ばの俊足を生かした機動力が武器。守備範囲が求められる中堅手で、チームの守備力を高める。
4人とも、日ごろの努力と優秀な成績が評価され、選抜の精鋭に選ばれた。
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2015年12月12日14:42
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篠山市がユネスコに登録 「創造都市ネッ...
ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が創設している「創造都市ネットワーク」のクラフト&フォークアート分野に12月12日、篠山市が選ばれた。国内では7市目になる。
同ネットワークは、文化の多様性を守るためにユネスコが2004年に創設したもので、創造都市(文化芸術と産業経済の創造性に富んだ都市)の世界的なネットワーク。クラフト&フォークアートのほかに、文学、映画、音楽、デザイン、メディアアート、食文化の計7分野がある。
同ネットワークには、各都市がユネスコに申請し、評価・認定を受けて加盟できる。加盟すると、国内外への発信力が高まり、ほかの認定都市との交流にもつながる。認定後は、ユネスコへの定期的なレポート提出が求められるなど、継続的な取り組みが大切になる。
篠山市では、12年に「篠山市創造都市推進委員会」を設置し、翌年には「篠山市創造都市推進計画」を策定。「食と器」をテーマに、クラフト&フォークアット分野での加盟に向けて取り組んできた。加盟が実現し、今後、クラフト分野を中心に創造都市との交流を進めていく。
日本国内ではこれまでに神戸、名古屋、金沢、札幌、浜松、鶴岡が認定されている。同分野では金沢市に次いで2市目。今回新たに47都市が認定され、116都市となった。
篠山市は12日朝、市役所の市民ホールで記念式典を開き、職員や市民など約100人が参加。酒井隆明市長は「あいさつでいつも言っている『世界のみなさん、おはようございます』が本当になりました。世界の魅力あるまちに仲間入りができ、世界に誇れるまちにしていきたい」とあいさつした。
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2015年12月12日14:41
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来年の「福男」は誰だ 春日神社で初の開...
写真・初の「福男選び」を開催する下野村若人会のメンバー=春日町野村で
春日町野村の春日神社周辺で1月10日午前9時から、開門神事「福男選び」が初めて開かれる。同町下野村地区の青年会「下野村若人会」(荻野高広会長)の主催。同神社鳥居までの約230㍍を駆け抜け、最も速かった参加者を“福男”に認定する。荻野会長は「一番福になって、幸せな1年を勝ち取ってほしい」と話している。
同日開かれる「十日えびす」(野村区自治会社寺部主催)に合わせて行われる。春日育成苑の東側をスタートし農道を走る。一般と小学生部門があり、両部門の3番以内に副賞を贈る。
「十日えびす」にこれまで以上の賑わいを持たせようと、同会で案を練った。同神社が、新年の開門神事「福男選び」で有名な西宮神社(西宮市)の分社であることから、春日神社でも同様の催しを開くことにした。
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2015年12月10日11:51
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日本人の特性
11月26日号本欄で「神社にも寺にもキリスト教会にも行く日本人の宗教心は良い加減ではあるが、世界に自慢できると、トルコの人に話し賛同を受けた」と書いたら、読者から「宗教に無関心で、世間を気にしているだけ。自慢できるようなことではない」との投書を頂いた。▼確かに、そのような日本人の特性は自慢するようなことではないかも知れない。ただ、決して宗教に無関心なわけではないと思う。▼家一軒建てるにも、何度も神官を招いてお祓いをする。亡くなった家族には毎日、毎月、あるいは何年経っても供養を続ける。これらは半ば形骸化した慣習にせよ、やはり「自然界に神が宿っている」、「ご先祖が今も自分達のそばにいる」ことが、無意識に心の中にしみこんで、自発的に行わせているのではなかろうか。▼小紙01年元日号で故・河合隼雄国際日本文化研究センター所長(当時)が丹波市の僧侶らとの対談の中で「日常生活の中に宗教が入り込んでいるのが日本人の特徴。だから宗教性というものを持っているのだけれど、意識化して形にならない」と話している。「それをしっかりやるために宗教家の役割が大事になる」とも。▼その点は僧侶や神官にいま少し認識して頂きたいが、このような日本人の特性は、やはり外国人に参考にはなるのではないか。(E)
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2015年12月10日11:50
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黒豆麺新うどん発売 12月13日、市場まつ...
写真・新発売される丹波ブラックうどんの調理例
丹波市立地方卸売市場(氷上町石生)で12月13日午前9時から「市場まつり」が開かれる。主催者で同市場を運営する東兵庫魚菜は、新商品の「丹波ブラ
ックうどん」を販売する。
自社製造の丹波黒大豆入りの麺を、ニンニクなどが入ったパンチの効いたラーメンスープのような八丁みそだしで煮込むうどん。会場で300円で販売するほか、アルミの一人鍋タイプにパッケージし、商品化する。
久下聖太社長は「ダシを決めるのが難しかった。温かいうどんをどうぞ」と話している。
カニ汁のふるまい(先着順、無料)、マグロ解体ショー(午前11時)、タイムセール(午前11時半から)、巨大赤イカ解体ショ
ー(正午から)、景品付きチクワまき(午後1時から)なども。同社(0795・82・3261)。
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2015年12月10日11:48
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俳人・細見綾子を顕彰 1億円受け基金提...
写真・市が活用策を検討している細見綾子の生家=青垣町東芦田で
丹波市は、開会中の市議会定例会に、青垣町に生まれた俳人、細見綾子を顕彰し、文化振興をはかることを目的とした「丹波市俳人細見綾子ふるさと文化振興基金条例」の制定を提案している。遺族から細見綾子の生家(青垣町東芦田)と1億円の寄付を受けたことから、現在、庁内で具体的な活用案などの検討に入っている。ゆかりの偉人や個人名の入った基金制定は、同市では初めて。
今年4月、細見綾子の長男、太郎氏の妻、澤木くみ子さん(東京都)から寄付の申し入れがあり、7月に話がまとまった。
昭和初期の建築と見られる木造平屋建ての生家は長く空き家になっており、太郎さんに頼まれた近所の住民が管理をし、俳句愛好家らが見学時に開放するなど、希望に応えてきた。
市は11月、鬼頭哲也副市長を座長に関係部長でつくる「利活用選定会議」を組織。関係8課から22の活用案を吸い上げ、基金の運用の仕方を含めて絞り込みの作業に入っている。細見綾子を顕彰する資料の展示にとどまらず、幅広い視点で活用法を考える。年度内に方針を固め、来年度から事業着手する予定。
市文化・スポーツ課は、「生家、基金ともに有効に活用したい」と話している。
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2015年12月10日11:47
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料理本世界ナンバー1 グルマン世界料理...
篠山市小枕出身で美術館「MIHO MUSEUM(ミホ・ミュージアム)」(滋賀県甲賀市信楽町)の学芸員、畑中章良さん(56)=滋賀県栗東市=が企画した料理写真集「美し(うまし うるはし)乾山四季彩菜」が料理本のアカデミー賞と呼ばれる「グルマン世界料理本大賞」芸術写真部門で、過去20年間の受賞作品の中から最優秀賞を受賞した。畑中さんは「10年前に出版した写真集がいまでも評価されてうれしく、驚いている」と話している。
フランス人の資産家が創設。優れた料理本を顕彰する世界で唯一の賞とされる。「20年ベスト・オブ・ザ・ベスト」は、1995―2015年の受賞作から審査された。このほど、ドイツ・フランクフルトで表彰された。
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2015年12月10日11:47
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競泳ナショナル合宿へ 井上真帆さん(丹...
丹南中学校1年生の井上真帆さん(ピュアスポーツ柏原所属)と、指導者の三藤豪大ヘッドコーチが12月14―22の9日間、富士水泳場(静岡県富士市)で行われる日本水泳連盟主催の「ナショナル強化選手合宿」に参加する。井上さんは「速い選手と泳ぐことでもっと強くなって帰ってきたい」と意気込んでいる。
女子の合宿には、指定競技の標準記録を突破した全国の中学1年生―高校3年生計44人が参加する。井上さんはいずれも今年8月に開催された、「全国中学校水泳競技大会(長水路)」(全中)200㍍自由形で2分5秒98(標準記録2分6秒27)、「全国JOCジュニアオリンピック夏季水泳競技大会(長水路)」(全国JO)200㍍個人メドレーで2分19秒38(2分21秒12)のタイムでナショナル選手標準記録を突破した。
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2015年12月10日11:47
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「書の甲子園」で入選 柏原高校・井本さん
「書の甲子園」と言われている「国際高校生選抜書展」(毎日書道会など主催)で、柏原高校1年の井本久未さんの作品が入選に選ばれた。応募数は、国内外の19の国、地域から約1万6800点。うち入賞、入選に選ばれた2000点が、来年2月2―7日、大阪市立美術館で展示される。「賞が取れるとは思っていなかったので、びっくりした」と喜んでいる。
井本さんの作品は、中国東晋時代の政治家、書家の王羲之の「集王聖教序」の一部で、6㌢四方の字を126字並べた大作。集中して書いても30分以上かかるという。
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2015年12月10日11:45
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サンタの正体解禁
クリスマスが今年もやってくる。小さなお子さんのいるご家庭の皆さん、プレゼントの準備は進んでいますか。わが家には小4の娘と小2の息子がおり、毎年この時期になるとサンタクロースに手紙を書いている。「良い子にしています。○○が欲しいです」―。
願いをかなえてやりたいと思うのが親心。おもちゃ屋へと走る。子どもたちの欲しがる物が人気の商品だと大変だ。どの店も品薄状態となり、おもちゃ屋の“はしご”は当然のこと、インターネットで探し回ったりと、てんてこ舞い。師走の忙しさの合間を縫って、ようやく揃えたプレゼント。それなのに毎年、その手柄をサンタに持って行かれるのは、なんとも口惜しい。そこで「サンタなんてばかばかしい。正体が父親であることを解禁するで」と妻に。しかし妻は「いずれ近いうちにばれる日が来る。信じているうちは親も子もイベントとして楽しめばええやん」とストップをかける。
ただでさえ家庭内で影の薄い私。せめてクリスマスの日だけでも、子どもたちから父親への感謝や尊敬の気持ちが欲しい。(太治庄三)
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2015年12月10日11:45
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愛が足りない
この春、長女が社会人の仲間入りをさせていただいた。今は大荒れの大海を木っ端に必死でしがみついて何とか浮かんでいる状態であるが、親としては帰るたびに話を聞くぐらいのことしかしてやることができない。
彼女は全国展開しているホテルチェーンでフロント業務をしている。仕事は忙しいがやりがいもあり、苦手だと思っていた接客業が案外自分に向いているのではないかと新たな発見もし、少しずつだが、何気ないことに感謝する気持ちを持てる余裕も出てきたようだ。
聞いていると、憤懣やるかたなく理不尽なお客様が実に多いのに驚く。どうやら自分のストレスを全く関係のないホテルのフロントにぶつけても構わないと考えているようだ。だいたい家庭や仕事場の鬱憤という自分事を赤の他人で解消しようなんて言語道断である。
先日、夫と小旅行に出かけた時のホテルで、まさにいつも話に聞いていた場面に遭遇した。30代とおぼしき男性客の態度が非常に感じ悪く、フロントの高齢の男性も辟易している様子だった。完全に人を敬うという気持ちが欠落している横柄で高慢でわがままな態度であった。部屋に入ってから夫に「あんな客の接客なんて、娘がかわいそうだ」と嘆いた。すると夫は、「社会なんてそんなもんだ。今、彼女は成長しているよ」と意にも介さない。
確かにそうかもしれない。だけどだけど、年末年始にかけて旅行する方にぜひ、お願いしたい。どうか「一期一会」でよろしく!
(土性里花・グループPEN代表)
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2015年12月10日11:45
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「くりたん―丹波のお店ガイド」創刊 定...
丹波新聞社では、丹波地域の店を紹介したガイド冊子「くりたん―丹波のお店ガイド」を制作、発行しました。丹波新聞のコーナー「あの街この店」に今年6月7日付の紙面から10月18日付までの間に登場した18軒を取り上げています。今回は創刊号になるもので、今後も同コーナーに登場した店をまとめた同冊子を定期的に発行。無料で配布します。丹波新聞社本社をはじめ丹波地域の一部施設に置いています。
A4サイズの8ページで、それぞれの店の外観や商品などもカラー写真で載せています。
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2015年12月10日11:44
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春日神社(篠山市本郷字口ノ坪)
西紀北小学校の横を少し登った所の山裾に鎮座する神社。創建は平安時代後期、仁安元年(1166)。火災で焼失後、弘化3年(1846)に現代の三間社流れ造、?(こけら)葺の社殿となり、昨年完成した立派な覆い屋が社を守っている。素晴らしい社殿と装飾彫刻が、地元有志の尽力によりこのたび国の重要有形文化財になったのは歓喜に堪えないものである。
石段を登って、中央向背を眺める。兎の毛通しの大きな鳳凰、すぐ下左右の桐花、中でも水引虹梁と向拝桁の間の竜が圧巻だ。宝珠をしっかり握り、右前方を睨んでいる。その左右には、唐獅子が2頭乱舞している。すぐ上には、比較的珍しい日輪が彫りこんである。木鼻の唐獅子と獏は大きなもので迫力満点だ。社殿の周り、8カ所の象、下方の縁左右には波の上を奔る月の兎が8つの様態を見せている。脇障子は鹿と紅葉である。6代目正貞の弟中井清次良正用の傑作である。
元高校教諭 岸名経夫
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2015年12月10日11:43
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観音寺(朝来市竹田)
雲海に浮かぶ天空の城として、大人気の竹田城の山裾に佇む真言宗の名刹である。城下町の常として、寺町通りにあるほかの寺院よりも高台に位置しており、竹田小学校の裏手を登って行った所にある。竹田観音寺山を借景にして、ここの庭園がすばらしい。よく手入れされ、植生も落ち着いたものである。
この寺の特色は、工芸品として市の指定文化財になっている転輪経蔵があることだ。佛教の教えをまとめた佛教聖典を納める八角柱の書架の中心に軸を入れて回転し、これを回すことで仏に近づける、いわば摩尼車と言うべきもので、その蔵が寛政10年(1798年)に落慶されたと伝わる。ここの梁間中央部には、宝珠を握り、口を大きく開けた右方向を睨む竜。木鼻には、唐獅子と獏、一方の端には別の竜。竹生島文様の、海の上を奔る2羽の兎。5代目中井丈五郎正忠と相方の久須善兵衛正精の力作である。
元高校教諭 岸名経夫
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2015年12月6日08:55
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先祖崇拝
丹波ゆかりの人物について講演をした過日のこと。講演後、「子孫はどうされているんですか」と質問を受け、「知りません」と答えた。そう答えたあと、こんな質問をアメリカで発した歴史上の人物を思い出した。勝海舟である。▼咸臨丸でアメリカに行ったとき、勝はアメリカの市民に「ワシントン大統領のご子孫は今どうしておられますか」と聞いた。すると、市民たちは「知らない。関心もない」と答えた。この返答に勝はすっかり驚いたという。▼「子孫はどうされているんですか」。この質問はいかにも日本的なのかもしれないと思う。日本では先祖崇拝の観念が強い。先祖とのつながりの中で自分があると感じている。先祖とのつながりを大事にすると、ともすれば子孫への思い入れも深くなる。だからこそ日本では家の継承を重んじる「イエ」観念が強かったのだろうし、子孫の消息も気にかかるのだろう。▼宗教学者の山折哲雄氏によると、ブッダの教えに基づく「仏」は、瞑想と修行を繰り返して悟りを開いた人だった。しかし日本では、人は死ぬとすべて仏になるという考えが芽生えた。特有の仏教に変質したのは、ブッダの教えに日本土着の先祖崇拝の観念が統合されたからだという。▼明後日の12月8日は、釈迦が悟りを開いてブッダとなった日―。(Y)
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2015年12月6日08:54
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思いめぐらす年の暮れ
「歳月人を待たず」の言葉の通り、はや12月。気ぜわしい季節の到来である。寒さもいちだんときびしくなった。この1年を振り返る忘年会シーズンでもある。
庭の草ひきをしていると、寒さが身にこたえるのに、草は元気に伸び放題。「ちぢむひと草は気にせず伸びる冬」という句も浮かんでくる。雑草は強い。人間も縮まないように、少しだけ背伸びして歩きたい。
「あれやこれニュースの波に浮き沈み」。毎日、様々なニュースと対面する。明るい事柄には、気持ちが和らぐが、暗い話題には心が沈む。良いこともあり、悪いこともあるのが世の中。平常心で過ごそうと思う。
「伝えますメールやラインに言葉乗せ」。スマートフォンが普及し、世の中様変わりの感。流行とはすさまじいものだ。ボランティアグループで、高齢者に送る絵手紙風の年賀状を書いている。今後も、便利な機器が登場しそうだが、手作りの味も大切にしていきたい。
人生は出会いと別れの繰り返し。身近な人との別れを経験した人も多かったのではないか。法事の席で、叔父(伯父)が甥(おい)に対し、「タバコをやめたら」「はよう結婚せえよ」といった言葉をかけるのを聞く。「故人に成り代わりまして」というあいさつが、葬儀などで述べられるが、「言ってくれる人があることは幸せ」とも感じる。亡くなった人がその場にいるような雰囲気になる時があるから不思議なものである。「成り代わる天の声届く仏事かな」。一句で締めるところがオンパレードになった。お許しを。今年最後の年をあわてずに。(臼井 学)
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2015年12月6日08:53
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あと何回の昼ご飯
今年もついに十二月に突入。年々、一年の過ぎる早さが増す。朝は比較的早く目が覚めるけれど、暗いと寝床から出にくく、時間の無駄遣いを悔やむ。夜は、夫と晩酌などすると眠くなり、テレビを見るぐらいが関の山、でも、そんな夜のテレビで気に入っている番組が「サラメシ」、サラリーマンの昼飯の略語だ。
俳優の中井貴一さんが声の案内役で、色々な職種のサラリーマンの昼ごはんを紹介していく。特にお弁当がおもしろい。愛妻弁当から独身男性が自ら工夫したもの、中高年の健康重視の弁当。営業マン、運送業、様々な製造業の人々が今の日本を支えていることや、地方ならではの味なども伝わる。昼ご飯や弁当を囲むとき、人は自ずと笑顔になる。もちろん昼だけではないが。
ついひと月前のこと、俳句で仲良くしている友達のご主人が、突然亡くなられた。絵を描くのが趣味で、仲間と日帰りのスケッチ旅行で、気分が悪くなり、そのまま帰らぬ人になられた。葬儀の時、息子さんが「父はその日、母の作った弁当を、うまいうまいと食べ、いい一日だったと仲間と喜び合っていたあと、倒れたと聞きます。父なりに幸せな生き方であったと思います」と挨拶された。友達は料理がとても上手だったから、人生最後に美味しい愛妻弁当を食べられたのだと思うと、涙が止まらなかった。
一年三百六十五回の昼ご飯、うちの場合、お互いに昼は良く出かけるので別も多い。あと何回か分からないからこそ、一回一回を大切にしなくては。