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切り抜き詳細

発行日時
2015-3-5 10:47
見出し
美術館の力
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=4173 美術館の力への外部リンク
記事詳細
 “奈落の底”のような真っ暗闇の通路を手探りで歩き、 目の先1㌢すら全く見えない空間に追い込まれた。 植野記念美術館友の会役員会の研修で訪れた瀬戸内・直島の「南寺」。 安藤忠雄設計の建物内に、 ジェームズ・タレルが仕掛けた作品だ。 ▼ 「そばにベンチがあります。 腰かけて5分ばかり前方をじっと見つめていてください。 何かがぼーっと浮かび上がるはずです」 との指示に従ううち、 確かにスクリーン状の方形がぼんやり見えて来た。 やがて他の人影や部屋の輪郭も眼に入る。 ▼ 「方形の面は微光が射す空洞なのですが、 光度は全く変えていません。 見えるようになったのは、 皆さんの眼が慣れてきたから」 との説明に、 皆一様に驚く。 建物を出る時、 「人間、 どんな絶望に陥っても、 脱するすべは備えていると、 作者は言いたいんでしょう」 と、 ガイドさん。 ▼ほかにも元歯科の廃屋を再生した 「はいしゃ」、 ガラスの階段から光が射しこんでくる石室の上に建つ神社等々、 数々の 「家プロジェクト」、 さらに、 建物のほとんどが地中に埋まる 「地中美術館」など、島じゅうがアートで溢れている。 ▼かつては産廃の不法投棄で荒れ果てた豊島(てしま)初め付近の島々も、ここにしかない美術館の力で再生された。 共同で3年ごとに開く芸術祭に100万人が訪れるとは、これまた驚き。(E)