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切り抜き詳細
発行日時
2014-10-19 8:54
見出し
心で味わう
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=4012
記事詳細
実りの秋は、 おいしいものが出回る季節。 とりわけ丹波の秋は、 舌をうならせる農産物が多い。 その味わいをしみじみ楽しむのだが、 相馬御風 (ぎょふう) は 「味わいは物にあるのではない」 と言った。 御風は、 童謡 「春よ来い」 の作詞で知られる詩人であり、 文筆家だ。 ▼ 「味わいは、 味わう人にある。 味わう人の心にある」 と御風は言う。 家の中でごろごろしながら美食をむさぼるよりも、 山に登って食べる握り飯の方がよほど美味であるように、 「すべての物の味は、 それを味わう人の心にある」 というわけだ。 ▼粗末な食でも心が働きさえすれば至上の味わいとなるように、 庭や野に生える名もない草花も、 一見すれば変哲のない風景も、 心の働きようによっては情趣を覚え、 味わい深いものとなる。 そんな見方ができるのは、 私たちが人だからこそだ。 ▼ヒトを定義して、「ホモ・サピエンス」という。「賢い人」 「知恵のある人」 などと訳され、 ヒトと動物との違いを、 知性の有無に求めるのだが、ホモ・サピエンスのもともとの意味は 「味わう人」 であるそうだ。 味わうという行為は、 人の根源であることがわかる。 ▼田園生活者だった御風は、 村の自然や生活にも味わいを見いだした。 時まさに、 村里が鮮やかな装いとなる秋。 せいぜい味わい、 人である喜びにひたりたい。(Y)