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切り抜き詳細
発行日時
2014-6-29 8:30
見出し
物語
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=3897
記事詳細
「餅をついた臼には物語がある」 と、 哲学者の内山節 (たかし) 氏は言う。 東京のほかに群馬県の山村にも居を構える内山氏。 その山村の家には、 家の前の所有者から譲り受けた巨大な臼があるそうだ。 ▼前の所有者一家が餅をついていた風景を内山氏は知らないが、 その臼を見ていると、 臼とともにあった人々の暮らしが想像できるという。 餅をつきながら正月を待ちわびた家人。 臼の周りには、 はしゃぎ声をあげる子どもがいたかもしれない。 そんな物語を、 臼は語りかけてくる。 ▼受け継がれてきた物には、 物語がある。 もちろん臼だけではない。 22日付の 「自由の声」 欄に載った古本もそうだろう。 投稿者は、 古本屋で買った本に、 前の持ち主の名前や感想などが書いてあると、 その持ち主と知り合いになったような気がした、 と書いていた。 ▼同感だ。 私もたまに古本屋で購入するが、 読んだ痕跡が見当たらないきれいな本は商品としてはいいが、 古本ならではの味わいを感じない。 前の持ち主の物語が宿っていないからだ。 ▼投稿者によると、 某大手古本買取店に本を売りに行くと、 書き込みをした本は買い取りを断られたという。 書き込みは物語ではなく、 単なる汚れに過ぎないのか。 それとも書き込みに物語を感じるゆとりがないのか。 いずれにせよ味気ない話だ。(Y)