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切り抜き詳細
発行日時
2014-5-11 8:36
見出し
五十肩
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=3849
記事詳細
最近、 右腕に痛みを覚え始めた。 腕を真上に上げようとすると、 鈍痛がある。 何かの拍子に腕をひねると、 痛みが走る。 50歳代半ばの当方。 この痛みは、 五十肩なのかと自己診断している。 ▼作家の宮本輝に、 母親の思い出を記した 『五十肩』 というエッセイがある。 宮本が大学3年の時、 父親が死去。 事業に失敗し、 多額の借金を残した。 火葬を終えて家に戻ると、 母親は財布からなけなしのお金を取り出し、 夕刊を買ってくるよう宮本に命じた。 新聞の求人欄から仕事を探すためだ。 ▼そのとき母親は55歳。 どうにか見つけた仕事は、 ビジネスホテルの従業員食堂のまかない。 80人分のカレーを作り、 80人分のオムレツを焼いた。 生来体の弱かった母だが、 髪を振り乱して巨大な鍋を持ち上げた。 「春にならん冬はない。 へこたれへんで」 が口癖だった。 ▼10年間働き、 退職。 まもなく右腕が痛くなり、 五十肩と診断された。 66歳の五十肩だった。 ▼暮らしを立て直すため、 身を粉にした母。 生活の重荷を一身に担った強さを思う。 吉野弘の詩の一節にある。 「母は舟の一族だろうか こころもち傾いているのは どんな荷物を 積み過ぎているせいか」。 確かに 「母」 という字は、 わずかだが傾いている。 守るべき者のために身を投げ出して荷を背負っているからか。 きょうは 「母の日」。 (Y)