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切り抜き詳細

発行日時
2013-12-22 8:32
見出し
年の峠
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=3724 年の峠への外部リンク
記事詳細
 いよいよ年の瀬。 この時期を表現する言葉には、 いろいろあるらしい (金田一秀穂氏著 『オツな日本語』)。 年末のあわただしさを表現した 「年の急ぎ」、 旧年と新年の境を関所に見立てた 「年の関」。 ほかにも 「年の尾」 「年の限り」 「年の極め」 などがある。 ▼なかでも面白いのが「年の峠」。1年の終わりに向けて山を登っていく。 峠の向こう側には新しい年がある。 峠に立つと、 新しい年が望めるというわけだ。 ▼さて、 この峠。 全国各地を歩いた民俗学者の柳田国男氏は、 旅の中でもっとも感慨深いのは 「峠に立ったとき」 と言った。 「峠に立つと景色が一変する。 こちら側と向こう側では空気までも違う」。 景色も空気も変わる峠の向こう側に、 新年がある。 私たちが新年に希望を託すのは、 足を踏み入れぬ向こう側の新鮮さや可能性に心躍るからだろう。 ▼とはいえ、 現実では消費税増税が向こう側で待ち受けている。 景気回復が実感できない中での増税。 そう思うと、 心躍る気持ちもなえてしまう。 ▼柳田氏は、 峠に立つと、 風を感じたとも言う。 景色を眺めながら風に吹かれるのが旅の味わいだったそうだ。 今年もあと10日。 年の峠に立ったとき、 吹いてくるのはどんな風か。 寒風を予感し、 身が震えるのなら、 「春風や闘志いだきて丘に立つ」 (虚子) とつぶやくのも一手だろう。(Y)