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切り抜き詳細
発行日時
2013-9-22 9:27
見出し
覚悟
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=3643
記事詳細
過去、 たびたび水害に見舞われた福知山市に治水記念館がある。 水害と闘った先人の労苦を顕彰すると共に、 水害の歴史を伝える施設だ。 そんな記念館がある福知山にまた一つ、 水害の歴史が加わった。 テレビで映し出された惨状には息をのんだ。 ▼自然が猛威を振るうたびに、 人の卑小さを思い知らされる。 自然がきばをむいたとき、 人は途方に暮れ、 ひれ伏すしかない。 福澤諭吉が唱えた 「人間蛆虫 (うじむし) 論」 にうなずくばかりだ。 広大な宇宙に比すると、 けし粒のような存在の人間は無知無力で、 見る影もなく、 蛆虫のようなものという。 ▼しかし福澤は、 そんな蛆虫にも覚悟があるとした。 宇宙から見ると、 一場の戯れでしかない人生だが、 まじめに人生に取り組み、 己の本分をまっとうするという覚悟だ。 それが蛆虫でありながら万物の霊である人間の誇りなのだ。 ▼ 「この秋は雨か嵐か知らねども今日のつとめの田草とるなり」。 二宮尊徳はこう詠んだ。 幼時、 川の氾濫で田畑の大半が土砂に埋まり、 15歳の時にも氾濫で田畑のすべてを失い、 一家離散の憂き目にあった尊徳には、 災害の恐ろしさが骨の髄までしみこんでいただろう。 ▼そんな尊徳だが、 災害はいつかまた来ると観念しつつ、 今やるべきことにひたすら精を出すのみとした。 神々しいまでの覚悟だ。 (Y)