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切り抜き詳細

発行日時
2013-8-1 13:42
見出し
地獄考
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=3592 地獄考への外部リンク
記事詳細
 私の夫は、 死んだら灰にしてインドのガンジス川に流してくれという。 私は、 あんな混沌としたところは恐ろしいので、 ご免こうむりたい。  お墓はいらない。 日本の山の中で、 ひっそりと肩寄せ合う苔むした墓石たちには、 愛おしさと郷愁を感じるが、 あそこは如何にせん寂しすぎる。 私は、 さみしがり屋でわがままなので、 死んだら灰にして愛する家族に持っていてほしい。 できれば、 いつも身につけていてほしい。 そしたらいつでも愛しい人たちに寄り添っていられる。 そして、 今のところ、 その愛する人たちが死んでしまったら、 共に手を繋ぎ合って空に昇っていく予定でいる。  自分の魂が死後、 遺灰に宿るとは思えないけれど、 誰一人として、 実際に生命を終えた人が戻ってきて、 死んでからのことを教えてくれないので、 魂の行く末がわからない。 そもそも魂というものすら存在するのかどうかも疑わしい。  かつて、 死んでからどうなるかを私に教えてくれた人が、 たった一人だけいた。 私の祖母だ。 子どもの私に、 地獄絵図を見せながら、 「悪いことをするとこんな地獄に落ちるんだよ」 と、 何度も言って聞かせてくれた。  その絵は、 あまりに残酷な地獄の様子を、 微に入り細に入り描いた絵で、 火の池地獄で永遠に焼かれる人、 舌を抜かれている人、 ぶくぶく沸騰している釜の中で苦しんでいる人等々。 今でも目と心にしっかりと焼き付いている。  私は地獄には行きたくないので、 常々良い人でいようと思っている。  (土性里花・グループPEN代表)