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切り抜き詳細
発行日時
2013-3-17 8:57
見出し
生命をいただく
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=3468
記事詳細
詩人・石垣りんに 「儀式」 という詩がある。 食べることは、 生あるものを殺 (あや) めることだと教えてくれる詩だ。 魚を丸ごと1匹、 まな板に載せ、 よく研いだ包丁を握る。 そして 「頭をブスリと落すことから 教えなければならない。 その骨の手応えを 血のぬめりを 成長した女に伝えるのが母の役目だ」 ▼母から娘に伝えるのは、 魚の調理法ではない。 伝えるべきは、 「長い間 私たちがどうやって生きてきたか。 どうやってこれから生きてゆくか」。 人は食によって命を保つ。 その食の背後には、 命を殺める行為がある。 そのことを人は真正面から受け入れるべきだと、 この詩は説く。 ▼日本の伝統的な考えでは、 食事をとるとは 「ミ」 をとることだ。 「ミ」 とは魂であり、 霊。 だからこそ食事の前には 「いただきます」 と言い、 いただく生命の魂に感謝の心を表わす。 ▼過日、 我が家の庭に萌え出たフキノトウを摘んで味わった。 その苦味は格別で、 早春の香りと共に舌鼓を打った。 ▼フキノトウをはじめ、 春の山菜が持つ苦味は、 冬の間、 あまり動いていない人の内臓に刺激を与え、 動きを活発にさせるという。 フキノトウも生あるものの一つ。 フキノトウに感謝しつつ、 その若々しい 「ミ」 をいただくことで自らを活性化させるとは、 人はよくよく因業な存在だと思った。(Y)