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切り抜き詳細
発行日時
2013-3-3 8:28
見出し
早春
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=3453
記事詳細
南洋への旅を綴っているうちに早三月。 それにしても、 二月は、 一月と変わらない寒さ続きだった。 柏原の厄除さんの日はちょうど、 暦の上の 「雨水」 だった。 美濃では早朝、 ベランダにうっすらと雪が積もっていたが、 その後は雨となり、 まさに 「雨水」 を実感した。 「雨水」 は二十四節気の一つで、 降る雪が雨に変わり、 積もった雪や氷が解けて水となるという意味で、 早春の時候の季語。 二十四節気とは、 太陽暦を二十四等分して、 二至 (夏至・冬至)、 二分 (春分・秋分)、 四立 (立春・立夏・立秋・立冬) などの名称を配したもので、 中国の黄河領域の気象に即している。 つまり日本独自のものではない。 しかし、 旧暦の日本の気候と微妙に合致しているからこそ、 今でも季節の変わり目には、 取り上げられるのだろう。 現代の中国は、 かつての日本のように、 二十四節気の言葉を紐解くなどという風流とは、 およそ無縁で、 大気汚染の真っ只中と聞く。 敵対視している日本の空気清浄機がよく売れているという話も皮肉だ。 つくづく今の日本人の暮らしに風流とゆとりを感じる。 日没が随分と遅くなり、 夕方が少しゆったりと迎えられるようになった。 気候はまだまだ寒いけれど、 今まさに 「早春」。 この時季、 私の敬愛してやまない俳人、 細見綾子の 「早春の山笹にある日の粗 (あら) さ」 という俳句を、 必ず思い出す。 芽吹きには早い雑木山の笹に 日が当っている。 「日の粗さ」 という表現に、 早春の寒さと明るさを感じる。 あと数日で 「啓蟄 (けいちつ)」。 地中の虫もそろそろ目覚め始める。