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切り抜き詳細
発行日時
2013-1-27 9:20
見出し
芸術家
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=3418
記事詳細
柏原出身の画家、 川端謹次の逸話が面白かった (本紙1月20日付)。 東京美術学校在学中、 教えを受けた画家、 藤島武二から 「絵描きになりたいなら、 飯より絵を好きになれ」 と言われた川端。 晩年、 家族で温泉旅行に出かけたとき、 その言葉通りの川端の姿を家族は目の当たりにした。 ▼夕食で、 吸い物の椀のふたを取った川端は、 ふたの裏をじっと見つめている。 水滴の美しさに見とれていたのだ。 川端は、 やおらスケッチブックを取り出し、 描き始めた。 夕食の箸を取ろうともしなかったという。 ▼旅館のぜいたくな食事よりも創作に夢中になる。 似たような逸話が柏原出身の彫刻家、 初代磯尾柏里にもある。 がんに侵され、 病床にあったとき、 妹たちが 「元気になったら、 兄妹で温泉に行こうね」 と話しかけても返事をしない。 しかし、 「元気になったら彫り物をせんならんな」 と問いかけると、 柏里はうれしそうに顔を崩し、 「そうや」 とうなずいた。 ▼温泉旅行という俗世の楽しみには興を覚えない。 創作しか眼中にない。 それほどの一徹な思いがなければ、 仕事を成しえないのが芸術の世界なのだろう。 ▼ 「四角な世界から常識と名のつく、 一画を磨滅して、 三角のうちに住むのを芸術家と呼んでもよかろう」 (夏目漱石 『草枕』)。 川端も柏里もその通りの芸術家だった。(Y)