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切り抜き詳細
発行日時
2012-12-23 9:00
見出し
正月
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=3393
記事詳細
我が家にはなかった習慣だったこともあり、 最近になって 「陰膳 (かげぜん)」 という言葉を知った。 辞書には 「遠く離れている人の無事を祈り、 留守宅の人が食事のたびに供える食膳」 とある。 平澤興 (こう) ・元京都大学総長の随筆に出てきた。 ▼正月や盆に、 家に戻れない平澤氏のために家族は陰膳をすえた。 学生時代はもちろん、 郷里の越後を離れ、 長い歳月がたってからも続いた。 平澤氏がこの随筆を書いたのは、 晩年の入口に立った頃。 その時点でも、 生家では正月に陰膳をすえた。 ▼平澤氏は若い頃、 陰膳について 「田舎ものがする妙な習わし」 程度にしか思えなかった。 しかし、 年をとるにつれて 「もったいなく、 かたじけないこと」 と思えてきたという。 人格者だった平澤氏だ。 そんな人物でも、 人の世の真理が骨身にしみてわかるのは、 相応の年数が必要ということか。 ▼ 「門松は冥土の旅の一里塚」 は、 一休の有名な歌。 年が明けるということは、 それだけ死に近づくということ。 つい浮かれてしまう正月だが、 この歌はそんな陽気な気分を戒める。 生気に満ちた若い頃なら、 心にとまらなくても、 年をとると、 自然と胸にしみてくる歌だ。 ▼アンチエイジングが言われる昨今だが、 物事の奥底に通じることができるのかと思えば、 年をとるのも悪くはない。(Y)