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切り抜き詳細

発行日時
2012-12-8 15:53
見出し
手紙
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=3379 手紙への外部リンク
記事詳細
 今日12月9日は、 夏目漱石が死去した日。 その漱石の葬儀に加わった僧の一人に、 丹波ゆかりの僧がいた。 播州・安富町の生まれで、 春日町の少林寺に養子に入った富澤珪堂だ。 珪堂は、 東京にある漱石の家を訪ねたこともあり、 漱石と手紙をやり取りする仲だった。 ▼漱石は、 若き僧侶だった珪堂を頼もしく思っていたようで、 「葬式の時、 来て引導を渡してください。 私に宗旨はありませんが、 私に好意をもってくれる偉い坊さんの読経が一番ありがたい」 などと書いた手紙を送っている。 ▼この手紙も含めて確認されている漱石の手紙は2500通以上あるらしく、 漱石は無類の手紙好きだった。 しかし今では、 手紙よりもメールが主流になっている。 ▼12月2日付の弊紙で、 河合雅雄氏が 「ケイタイ」 についてのコラムを書かれている。 その中に 「便利で楽しいという反面、 むしろ弊害の方がまさってきたように思う」 とある。 過度のケイタイ依存は、 人間関係の弱化や社会性の喪失などを招くと指摘されている。 ▼手紙からメールへ。 こうした社会の進展がもたらす弊害を、 漱石は見抜いていた。 「文明はあらゆる限りの手段をつくして、 個性を発達せしめたる後、 あらゆる限りの方法によってこの個性を踏みつけようとする」 ( 『草枕』)。 漱石亡き後も、 その言葉は今に生きる。(Y)