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切り抜き詳細

発行日時
2012-11-15 9:03
見出し
忘れられない人たち
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=3353 忘れられない人たちへの外部リンク
記事詳細
 若い頃、 いろんな国を歩いてそこで暮らす人々を見てきた。 環境、 宗教、 食べ物、 自分がこれまで認識していたものとは違う多様な生き方がそこにはあった。  アフリカで出会った自閉症のアメリカ人の青年は、 自分を鍛えるために一人で旅をしていると言っていた。 宗教の違いで愛する人と引き離され、 それでも彼の国で子どもを産みたいと一人異国で出産した人がいた。 「私をメイドとして日本に連れて行ってもらえませんか?」 とぼろぼろの旅行者の姿をしている私たちに、 切実な目をして訴えてきたアフリカの少女がいた。 大きな湖のある灼熱の大地で出会った少年は、 私たちが差し出した水筒の金気臭いぬるい水を美味しそうに飲み、 「最近魚が全然獲れなくなった。 今日も家族に魚を持って帰れない」 と悲しそうにつぶやいた。 ネパールで出会った日本から来た女の子は、 お店の壁に自由自在に大きな絵を描いていた。 「髪の毛を切ってあげるよ。 私、 美容師なの」 と、 豪快に笑った。  インドのゴアでは、 3歳から18歳までの4、 5人の子どもがいるフランス人の家族が長逗留していた。 海辺で遊び、 日暮れとともに、 丸めたゴザを小脇に抱え、 皆で宿に帰る姿が目に焼き付いて離れない。 ソマリアから逃げてきた少女の瞳がまっすぐで黒曜石のように美しかった。  人は同じ道を歩かなくてもいいのだと、 彼らから教えてもらった。 与えてもらったものは計り知れないが、 私は少しでも彼らに恩返しできているのだろうか。  (土性里花・グループPEN代表)