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切り抜き詳細

発行日時
2012-11-8 9:00
見出し
一人ぼっちの山行き
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=3347 一人ぼっちの山行きへの外部リンク
記事詳細
 色づき始めた野山を眺めながら、 ぼんやりと昔のことを思い出す―。  高校3年生の秋、 部活も引退し、 暇を持て余していた私。 もともと山が好きということもあって、 「家の周囲の山、 すべてに登ろう」 と決心した。 当時は 「山が好き」 というと、 「ダサい奴と思われるのでは」 と勘違いしていたため、 友人は誘わず、 一人ぼっちの山行きを週末が来るたびに敢行した。 歩きやすい尾根まで上がり、 そこからは適当に方向を定め、 尾根伝いに歩いた。 道中、 特徴的な木に出くわすと、 その幹に 「ここまで来た」 という証を残すため、 ナイフで日付と自分の名を刻んだ。  夕暮れが近づくと下山。 目の前に立ちはだかる藪を漕ぎながら、 「この方向で本当に合っているのかなあ」。 そんな心配を何度か繰り返していると、 すうぅと視界が開け、 いつもの通学路の脇に飛び出す、 なんてこともしばしば。 一気に日常空間に連れ戻された残念な気持ちと、 迷わず下山できたという安堵感とが交錯する、 なんとも不思議な感覚にとらわれたものだった。  さて久しぶりに、 名を刻んだあの時の木に会いに行ってこようかな。(太治庄三)