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切り抜き詳細
発行日時
2012-10-28 9:00
見出し
幸福な記憶
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=3337
記事詳細
息子一家から北海道のお土産が届いた。 碧君 (孫で小学三年生) の秋休み (二期制のため) を利用し、 旭川空港でキャンピングカーをレンタルしての旅だったとか。 旭川から南下して富良野、 帯広、 さらに北東の知床、 網走まで、 パソコンのメールで楽しそうな写真をたくさん送ってきた。 三十一年前、 息子が小学二年生の夏休みに、 親子五人で北海道を一週間旅した。 なるべく安上がりにしようと、 敦賀からフェリーで小樽に渡った。 一応、 車内で寝るつもりで、 寝具なども積んだのだが、 夫がワゴンタイプの車を少し改造しただけなので、 思ったよりも寒く、 結局、 民宿を探しては泊まった。 今でも、 折りにふれては、 この時の旅の楽しさが話題になる。 最初に泊まった 「竜宮荘」 という、 名前だけは豪華な民宿で、 夜中に蚊や蠅で悩まされたこと。 でもホタテの刺身と味噌汁がおいしくてお代わりしたこと。 そして、 知床の 「オシンコシンの滝」 にまつわるエピソードだ。 この滝に降り立ったとき、 夫と息子が並んで立ちションをした。 その可笑しかった記憶と、 滝から霧が、 オシッコから湯気が立ち上っていた様子が、 印象的だったらしい。 その年の正月以来、 百人一首の 「村雨の露もまだひぬまきの葉に霧たちのぼる秋の夕暮れ」 が、 息子にとって、 旅の記憶と重なるのか、 十八番 (おはこ) になった。 湖畔でジンギスカンを焼いたこと、 大雪山の峠の焼きとうもろこし、 幻想的な摩周湖の景色など等。 幼年時代の幸福な思い出は一生の宝物。 碧君にとっても幸福な記憶として一生残ることだろう。