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切り抜き詳細

発行日時
2012-10-18 9:21
見出し
村上春樹
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=3328 村上春樹への外部リンク
記事詳細
 村上春樹の2004年の作 「アフターダーク」 は、 完成度はいまひとつと思えるが、 1カ所、 主人公のマリが偶然に関わった中国人娼婦の美少女のことを、 「友だちになりたいと強く思った」 と述懐する場面が、 妙に心に残る。 ▼その娼婦は深夜、 ホテルで客に暴行され血まみれになっていた。 マリはたまたま近くのファミレスにいて、 ホテルの女支配人から頼まれ緊急の通訳をしただけ。 なのに、 「何だか彼女が私の中に住みついてしまったような気がする」 という。 ▼このくだりを読んでいて、 春樹が雑誌のインタビューで 「海辺のカフカ」 の主人公の15歳の少年について語っていたことを思い出した。 「彼は僕とは全然違う人格だが、 彼という存在の中に潜り込むことができる。 それは読者にとってもすごく大事なことであってほしい。 その大事なことを通じて、 僕と少年と読者が結びあうことができたら、 それこそすばらしいだろう。 小説とはそういうものなのでは」 と。 ▼春樹が受賞を逃したノーベル賞に中国の作家、 莫言(モーイエン)氏が選ばれた。 映画 「紅いコーリャン」 の原作者という。 日中の国家間がぎくしゃくしているこの時期、 文学ファン同士は、 作家をはさんで結び合いたい。 「文化の交換は国境を越えて魂が行き来する道筋なのだ」 (朝日新聞9月28日号への春樹寄稿) (E)