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切り抜き詳細

発行日時
2017-11-9 9:17
見出し
14.火の安全願う「亥の子」
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記事詳細
 炬燵が恋しい季節になってきました。「そろそろ亥の子やさかい炬燵出そうか」と言いながら、祖母が、炬燵の火入れをしてくれたこと。実家の父が「亥の子のお餅搗いたさかい」と毎年届けてくれたこと。亥の子は私にとってあたたかい思い出です。  亥の子というのは、旧暦の10月(今の11月)の、最初の亥の日のことです。ちなみに今年は11月8日が亥の子の日です。  亥は陰陽五行説で水にあたり火災を逃れるとされるため、「亥の月亥の日」から火を使い始めると安全といわれていました。今は寒くなって来たらスイッチをぽんと切り替えるだけで暖かく過ごすことができますが、昔は暖をとるには火の気が必要でした。安全を願う気持ちが〈亥の子〉だったのでしょうね。  茶の湯では、亥の子の日に夏向けの風炉をしまい、炉に切り替える「炉開き」を行います。炉開きは「茶人の正月」ともいわれ、初夏に摘んで寝かせておいた新茶を初めて使う口切をして亥の子餅をいただきます。  また、亥の子の日は、田の神様が一年の仕事を終えて山に戻られる日といわれ、新米でお餅を作りおもてなしをします。ちょうどこの頃、お米も収穫が済み農作業も一段落します。亥の子餅を食べて、自然の営みに感謝し、みんなの健康や繁栄を願った日のようです。多産の亥にあやかり無病息災、子孫繁栄を祈る行事とも言われています。  篠山のある地域では、子供たちが、わらの棒を作り地面をたたきながら「いのこのもち祝いましょ。お神酒を供えて祝いましょ」と囃し、集落内の家々を一軒ずつまわり、お菓子やご祝儀をもらうという、亥の子の行事があるそうです。土地の邪霊を鎮め、土地の神に力を与えて豊かな収穫を祈るおまじないだといわれています。  11月、木枯らしが吹き始める頃、〈亥の子〉なんて日があることをちょっと心に留めておいてほしいと思います。別に役に立つことはないと思いますが、何か心がほっとするような気がしませんか。 * * * 〈とがらしの葉のたいたん〉  霧で明ける頃になると思い出す味があります。〈とがらしの葉のたいたん〉です。夏の間たくさんなってくれたとがらしの木を片付ける時に、まだ元気な葉や小さな実を採って来て、さっと湯がいて水気を切り、お醤油やお酒、みりんなどで好みの味をつけ煮ます。子供の頃は苦手な味でしたが今となればおつな味です。〈きごしょう〉といって辛唐辛子の葉や未熟な実を佃煮にしたものが京都の味になっていますが、万願寺でも、ひもとうがらしでもピーマンでも、それなりに美味しいものです。昔の人の始末(倹約)の知恵の味かもしれませんね。 (野口 歩  17.11. 2掲載)