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切り抜き詳細

発行日時
2017-8-10 9:12
見出し
本当はね、悔しい思いでいっぱいなの!
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記事詳細
 只今、8月7日午後7時。台風真っ只中の丹波の夜。ビール片手にこの原稿を書いている。外は雨脚きつく、少し開けた窓から入ってくる風は普段より少し冷たく、湿気と雨の香りを含んでいる。チビタと父ちゃんのお喋りと、マイペース姉ちゃんが弾くピアノの音と雨音が入り混じって、ほろ酔いの母ちゃんの耳に心地よく流れ入ってくる。夕飯は既に終了し、穏やかな時間が流れる。これって1カ月以上ぶりの穏やかさ。それも台風のお陰?それでも父ちゃんと母ちゃんは悔しい思いでいっぱい。  この1カ月、ブルーベリー収穫が始まり、ここ最近は暑さも続き、甘さものっていい状態。摘み取り園に来て下さったお客様はどの顔も笑顔。それが台風の雨風で出荷も摘み取り園も否応無しにストップ。昨日の夕方、あまりの悔しさに一人畑で収穫しながらブルーベリーたちに向かって「明日、台風来るけど頑張るんやで、実落としたらあかんで、みな待ってくれてはるんやからな」と声をかけながら摘み取った。こんなに甘くなっているのに届けられない悔しさが込み上げる。分かっている、自然相手なので仕方ないことは。  今は祈るのみ。この暗闇の中、ひたすら雨風に身を任せて耐えている樹々たちが無事であることを。そして本当に自分たちはなぜ農業を始めて、なぜお客様に届けたいか、そんな漠然としたことを改めて考えさせてもらえる時間を奇しくも台風がくれた。この時間を大切にしなければと、ほろ酔い母ちゃんは苦笑い。 (古谷暁子・ブルーベリー農家)