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切り抜き詳細
発行日時
2017-7-16 9:00
見出し
地獄
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=5057
記事詳細
煮え立つ釜で茹でられている者。糞尿にまみれた池で、体を虫に食われている者。焼けた銅を口に注がれている者。耐えがたい苦しみに身もだえる人間を描いた絵が、丹波市立植野記念美術館で開催中の中島潔展で展示されている。地獄のありさまを描いた地獄絵だ。▼「うそをつくと、閻魔様に舌を抜かれるよ」「悪いことをしたら、地獄に堕ちるよ」。中島氏は子どもの頃、母親に地獄絵を見せられ、正しく生きるよう戒められた。殺伐とした今の世に生きる画家として、日本の心を伝える絵を描かなければとの思いから、子どもの頃の原体験を基に地獄絵を制作したという。▼地獄は存在するか。そんな疑問には、哲学者カントの考察をもって答えたい。カントは、神の存在は理論的には証明できないが、道徳的に生きるためにはその存在が“要請”されると考えた。地獄も同様だろう。人が道徳的に生きるためには、地獄は存在すると信じるがいい。▼江戸時代の名僧、白隠は、子どもの頃に聞いた地獄についての説法に恐れおののき、その恐怖を克服するために仏道修行に励んだという。地獄の存在が名僧を生み出した。▼晩年の白隠に師事し、青垣の高源寺を復興したことで知られる弘巌和尚作の地獄絵も、中島潔展で展示されている。この絵も見ものだ。(Y)