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切り抜き詳細
発行日時
2017-6-15 9:11
見出し
熊本の被災地で
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=5022
記事詳細
熊本地震被災地ツアーの途次、南阿蘇村の写真家、野中元さん(49)宅で昼食を頂いた。24年前に移住した古民家で畑を作り、自給自足に近い生活をしている。取れたての野菜を妻のかるべけいこさん(47)が料理する。▼メニューは蕪の菜飯に具のたっぷり入った味噌汁、新じゃが・ニンジン・ベーコンの煮物、自家製ハム、車麩の揚げ物、小松菜のクルミ和え等々。土間の台所にくどがあり、薪でご飯を炊く。▼深夜に本震勃発の際、柱も戸板も吹っ飛びガラスが散乱する中を家族3人で脱出、車で近くの避難所に逃げ込んだ。一夜明け、近隣の人達が持ち寄った米や野菜を携帯コンロで調理した。イチゴやアスパラも集まって、食事だけは普段通りに続けられた。不便な環境に気がめいり愚痴が出そうになっても、おいしいものを食べている時は気持ちが和み、昔話に花が咲く。▼1カ月後に元の暮らしに戻って間もなく、スーパーで中年女性から「その節は大変お世話になりました」と声をかけられた。妻が「夫婦で避難所に来ていた方よ」と教えてくれた。夫は退所後に癌で亡くなったそうだが、息を引き取る間際まで「あの時のご飯がこれまでで一番おいしかった」と涙を流していたという。▼やはり、「食べ物は金さえ出せばいくらでも口に入る」ものでは決してない。(E)