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切り抜き詳細
発行日時
2017-3-2 18:01
見出し
春の宵に朗読を。
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=4916
記事詳細
気の置けない友人ふたりと朗読会を春の良き日にしようということになった。ひとりはその昔、青山のお殿様の散歩道だったという桜が美しく枝を伸ばす川縁にカフェを構えている。窓からは高城山を遠景にして桜の花びらが淡々と咲き、そして、ほどけ散るのを見ることができる借景である。その淡く儚げであるけれども、人間よりもよほどしぶとく長く生き、過ぎゆく時代をじっと眺めてきた桜を、あの世とこの世の境が曖昧になる宵の闇を額縁として灯りを灯し、一幅の絵を慈しむように鑑賞しながら、桜にちなんだ美しい文章を読み、愛情込めて料理された身体が喜ぶ滋味深いわが篠山の地から生まれ出た恵みをいただくのである。五感で春を感じ、生きていることを愛おしむときである。まず、朗読者であり篠山で日々を暮らしてきた私たちがその多幸感を享受し満喫したい。 篠山にはかけがえのない自然があり生きる糧があり、そして大切な友がいる。ひとりは料理上手でしかも5種類の声色を使い分ける生まれながらの演技者であり朗読者。ひとりは話術確かでいかなる場でも慌てず一定のリズムを保ち言葉使いも正確そのものでしかも知恵者。一番怪しいのは私だが、歴代の日本語を操る天才たちの力を借りて美しい日本語を語ってみたい。やはり自分が一番楽しみたいのである。 桜には不思議な魅力がある。桜の元に集まって、もう何事にも動じなさそうな五十路娘たちがなにやらわくわくしていますもの。 (土性里花・グループPEN代表)