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切り抜き詳細
発行日時
2016-5-19 9:05
見出し
農家の“大人”
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=4630
記事詳細
田植えの季節である。農家の両親を手伝うことはほとんどなかったが、三十路に入って、なんとなく申し訳なくなり、今年初めて自主的に田植えの手伝いを申し出た。 ほとんどの時間は慣れない草刈りを頼まれた。ひたすら腕を振るう中で、「刈る」より「剃る」に近いと気づく。土と草の根元すれすれに歯を入れて滑らしていく様は、髭剃りのように思えたのだ。刈ったはずのところに一本草が出ているのを見つけた時などは、剃り残しの髭のように思えていらいらする。 見かねた母がやってきて、「貸せ」。丁寧に、でも、スピードもある母の草刈りは職人だった。終盤には田植え機も扱ったが、まだまだ父の監督がなければできない始末。嫉妬すると同時に心の中で2人を師匠と呼ぶことにした。 畔に寝そべり、アイスキャンデーを食べながら思った。 「ちょっと大人かも」。 お酒が飲めても、たばこがのめても大人になった実感はあまりなかった。農家では農作業を任せられてこその成人かもしれないと実感した。 植えた苗の列が曲がっている。成人しても一人前は遠い。(森田靖久)