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切り抜き詳細
発行日時
2016-2-11 8:34
見出し
全てのちいさき人のために
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=4537
記事詳細
いつ頃からか、82歳になる義母は思い出の小さなものをガラスの戸棚に入れて愛でるようになった。時々重たいガラス戸を開けては、そっと位置を直す。地道に夫婦共に働いて子どもを育て上げ、夫を先に見送り、今はひとり小さな思い出のものに囲まれて静かに日々を過ごしている。母たちの時代は、何も持たず田舎から出てきても、夫婦がまじめに働き贅沢もせず暮らしていれば、二人の子どもを大学まで出し、購入した家で慎ましく平和に暮らすことができた。 「チャンスは平等にある」と言う。本当にそうなのだろうか。国によっては、大学までは学費、交通費が無料の国もある。親の所得に関係なく教育を受ける権利が守られているのだ。子どもは親を選べないのだから当然と言えば当然のことだ。子どもは国民全員の子どもだと、この子たちが私たちの一番の宝だと考えているのだろう。経済的不安なく、安心して教育を誰もが受けられる権利。夢のような話だ。 日本では大学を卒業するまでには相当額のお金が必要になる。けれど現実は、働いても働いても収入がその日をやり過ごすのに精一杯という家庭も少なくない。経済的不安に怯え、親の心配をして、子どもらしい子ども時代を過ごせない子もたくさんいることだろう。 チャンスは全く平等ではない。幸せになるのに大それたことは必要ない。ただ「地道に働いている者が報われる社会」であればいい。幸せそうに笑う母を見ていて、そう思う。 (土性里花・グループPEN代表)