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切り抜き詳細

発行日時
2016-1-14 10:05
見出し
新年の約束
リンクURL
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記事詳細
 今年も義母のいる広島で、暖かな良いお正月を迎えた。82歳の母と共に三社参りもできた。  そんな穏やかな元旦の午後、母が缶箱を出してきた。表に「母さんの宝箱」と書いてある。蓋を開けると、出るわ出るわ、孫である娘たちの手紙、落書き、手作り品の数々。線の殴り書きから、文字を覚えたてで判読不可能なものの羅列、チラシの裏に書かれた落書き、果ては崩れかけの手縫いのクマ、きちんと読めるようになった手紙まで。まるで孫たちの成長の記録である。  母はそれぞれに付いている物語も覚えていてその一つに、当時私たちが住んでいた大阪から母の住んでいる広島へ送った一通の手紙の話がある。まだ文字を覚えたての次女がおばあちゃんにどうしても自分で書いて送りたかったのだろう、普段なら封筒の表書きだけは私が代筆して出していたのだが、ポチ袋大の封筒につたない字でこう書いてある。宛名の場所に自分の名前、送り主の住所を書くべき場所に広島市内の母の地名までと母の名前。それだけ。その上、判読困難。それでもきちんと届いたという。母は今でもその手紙の話をする度に「本当によく届けていただいた」といつも郵便屋さんの素晴らしさを褒め称える。もう20年も昔の話であるが、母の感謝の気持ちと感動は今でも色あせない。  お墓に必ずこの宝箱を入れてねと言う母。さみしく約束する私。だけど、お母さん。もしもお迎えが来たら、まだお呼びじゃないよと言ってね、約束よ。 (土性里花・グループPEN代表)