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発行日時
2015-7-5 9:24
見出し
背中押すエネルギー
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記事詳細
 丹波市の柏原中学校で行われた平和講演会―。戦没画学生慰霊美術館「無言館」(長野県上田市)の館主、窪島誠一郎さんは生徒たちにこう語りかけた。  「画学生たちは、平和運動や戦争に反対するために絵を描いたのではない。出征する直前まで、ただ大好きな人、風景を描いた。彼らの絵を見て、自分にもこれほど大好きなこと、夢を持つことができるだろうかと問いかけてほしい。画学生たちの作品を見て、『やるぞ』『(画学生たちに)負けないぞ』と思って帰ってほしい」  「無言館」という名の由来は、「もっと絵を勉強したかったと思っていた学生たちの絵を前にすると、『ちゃんと生きているか』と叱られているような気になり、人を無言にさせるから」だという。  東日本大震災で被災した宮城県石巻市で「無言館展」を開いたところ、家も家族も失った男性が鑑賞に訪れ、「勇気をもらった。生きていこうと思う」と話し、帰っていったという。窪島さんは、「画学生たちの絵には、そういうエネルギーがある」と語る。  画学生だけではない。本紙で連載中の「丹波人の証言」で語られる、数多くの戦死者たちにも、ずっと一緒にいたかった人や、やりたいことがあったはずだ。  画学生たちの絵を見ていると、大切な人たちと一緒にいられることのありがたさ、好きなこと、好きなものを見つけることの大切さを思い知る。70年の時を越え、見る人の背中を押してくれるエネルギーが確かにあった。戦争が大嫌いなことを再認識し、大好きなものは何かを確認する年にしたい。(芦田安生)