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切り抜き詳細
発行日時
2015-5-21 8:37
見出し
美しい場所
リンクURL
http://tanba.jp/modules/column/index.php?page=article&storyid=4253
記事詳細
雨がぴりぴりと降る。 山は深く呼吸をしながら、 白い霧を吹き出す。 頬にあたる空気が水をたっぷりと含んでひやりと冷たい。 今日は 「多紀連山のクリンソウを守る会」 の総会後、 クリンソウが見られる5つの登山口ルートのうちの1つ、 火打岩から山に入った。 ここは山に入ってすぐに100段を越す階段があり、 500㍍ほどの急勾配が続き、 尾根に至るコースだ。 クリンソウの群生地が見つかったのは、 8年前。 登山道の周囲を覆っていた笹が枯れた時、 発見された。 当団体発行のパンフレット写真で見知ってはいたが、 実際に目にするクリンソウは、 想像していたよりもはるかに力強く、 活き活きと大地にその葉を大きく広げていた。 その葉元からすっくと立つみずみずしい茎に、 小さく可憐な紫色の花が繋がって輪を成し、 6―8輪段々に下から咲き上がる。 まるで天使の花かんむりがあたり一面にぽっぽと浮かんでいるようだ。 水と陽を好み、 湿地帯にまどろみながら日光と戯れることのできる場所が、 天使たちにはお気に入りらしい。 花に寄り添う清清しい水が光輝く。 水たまりの中のオタマジャクシも短い尻尾を忙しげに揺らしながら、 楽しそうだ。 鳥のさえずりは天上の音楽、 木々に咲く花たちも、 この楽園のように美しく平和な場所を祝福するかのように、 風にさわさわと揺れながら微笑みを浮かべて見守っている。 あの山のどこかに誰でもが幸せになれる場所がある。 幼い頃、 繰り返し聞いた懐かしい昔話がここにあった。 (土性里花・グループPEN代表)