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オルビス

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発行日時
2015-4-26 8:38
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リンクURL
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記事詳細
 孔子の弟子、 子貢 (しこう) が旅の途中で、 畑を耕している老人に出会った。 老人は井戸から瓶 (かめ) に水を汲み、 えっちらおっちら畑に運んでいる。 労力を要し、 能率が悪い。 見かねた子貢は 「水汲みの道具を使ってはどうか」 と提案した。 ▼老人は答えた。 「道具を使うと、 道具に頼る気持ちが生まれてしまう。 道具に頼り切ると、 一体、 どこに人間の精神が残るというのか。 精神がけがれてしまうから、 道具を使わないのだ」。 ▼今、 植野記念美術館で開かれている 「滝平二郎展」 のオープニングイベントで、 滝平の長男、 加根 (かね) さんが滝平について語った。 その中に、 冒頭の話を思わせるエピソードがあった。 ▼滝平は、 鉛筆で描いた下絵を切り刻んで、 きりえを制作していた。 しくじると、 下絵を描き直さないといけない。 見かねた加根さんが 「下絵をコピーすれば」 と提案した。 コピーのおかげで便利になった。 しかし、 作品の緊張感が薄れてしまったという。 うなずける話だ。 これまで1枚1枚、 真剣勝負だったのが、 しくじっても大丈夫となると、 気持ちにゆるみが出るだろう。 それは作品にも投影される。 ▼脚本家の倉本聰氏の指摘をかみしめたい。 「便利とは人間が自分のエネルギー消費量をできるだけ抑えるということ。 即ち人間がサボルことである」。(Y)