秋が深まり、夜は肌寒いですね。
9月も終わりそうですが、丹波の復旧はまだ終わりません。
町が被災すると、復旧、復興、町づくりという段階が行われます。
現在の丹波は、家の裏に泥が迫ってきていて、床下はべちゃべちゃ。湿気が畳や床を腐らせ、そういったことを解決できていない家が沢山残っている、「復旧」の段階です。
「普通の生活を普通に送れる」今はまだ、これを目指している段階です。
この「被災」という経験。
絶対に起こってほしくないものです。しかし、横田さんは日々の復旧活動に奮闘しながらも、この被災からあるものを得ることができると言います。
それは、「災害支援をつなげるネットワーク」この中に丹波市が入った、ということです。例えば、新潟、広島、紀伊半島など、被災した地域はそこから全国的なつながりを持ち、助け合って災害支援に取り組んでいます。そのネットワークに、丹波市も入ることとなったのです。
被災を経験することにより、「この町をなんとかしてあげたい」という気持ちで内外から集まってくる人や知恵。災害前の丹波にはなかったこれらのつながりが、今はある、ということに気づいても、それは決して悪いことではありません。横田さんはそう言うことを考え始めているようです。
外からのつながりについてもその変化に気づくことができますが、さらに、丹波市の中で暮らす人々自身にも変化をもたらしたことがあります。
それは、市民一人一人が自立した町づくりの形を見直す機会になっている、ということです。地域コミュニティの重要性や、めんどうなものだと思っていたような自治活動が、改めて必要だなと認識されるこの機会は、こういったことがあって、よりしっかりと見つめられたものだといえます。
今の世の中は、災害によって気づくことが多い世の中です。
人脈や距離をも超えた他の人たちの力を借りることで、成り立つ社会に暮らしている、ということに気づくことは、地域にとって最重要です。
そういったことに気づき、そのつながりを使える地域は発展し、そうでない地域はあらゆる問題に対処しづらくなります。
今の丹波は、そのことに大きく気がつきはじめた状況にあります。
今の世の中は、当事者として自分たちが自分たちのことをやれる人たちが賞賛される世の中です。
行政の役割に必要性を感じるとともに、地域防災に「自分たち」がどれだけ取り組んだのか、ということを考え、実際にその経験を得た丹波は、自主自立の面でも大きなきっかけを得ました。
これらのさまざまなきっかけを収穫しないのでは、あまりにも勿体ない。それが横田さんの気持ちです。
正しくても、良い考えでも、いまの機会を「良い機会」だと思うことはなかなか難しいことです。
しかし、起こってほしくないけど、起こってしまったのなら、そこから学びを得ることはできます。災害を受けただけではありません。
災害受けてつらいだけじゃ残念だから、じゃあいまのこの努力は何に生かせるのか、そう思ってつなげられることってたくさんあるはずなのです。
そういう、「転んでもタダじゃ起きない」気持ちで、この期間をすごしたい。横田さんのそのお話は、確かな響きを持っていました。
(筆者:水谷 冬妃)