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切り抜き詳細

発行日時
2012-2-16 12:28
見出し
たんば哲学カフェ「エロティシズム」開催報告
リンクURL
http://shiftup.jp/a/1121 たんば哲学カフェ「エロティシズム」開催報告への外部リンク
記事詳細

2月の哲学カフェを開催しました。

テーマは「エロティシズム」。いろんな論点が出て盛り上がりました。次回は3月14日(水)「男と女」をテーマに開催します。

以下、当日の様子をご紹介します。本棚も追加しました。

まずは、ファシリテーターの高嶋先生による感想ツイート。

たんば哲学カフェ2シーズン第5回目「エロティシズム」@月あかりさんにて。12名の参加で、「唯幻論」的認識からの問題提起を皮切りに、エロやエロスとの区別、またフィリアやアガペーとの区別、官能や性欲、本能、エロス的美・表現のあり方、エロティシズムの今後などを議論しました!楽しかった!

今日のたんば哲学カフェ、皆で「エロティシズム」について議論。いろんな論点が出て面白かったが、今日の皆の議論を手がかりに自分なりに辿りついたのが、「エロティシズムが男女関係を見直す重要な手がかりになる」ということ。自分一人では思いも寄らなかったであろうところに着地したという意外性。

それから、いつものように、板書をアップします。

哲学カフェ「エロティシズム」板書

 

当日持ち寄った書籍はブクログで公開中です。

哲学カフェの本棚

また、冒頭にお配りした、小橋が10年ほど前に書いたコラムを下記に掲載します。

直接的にエロティシズムが題材ではないのですが、人間は「不能」であり、それを文化(幻想)で補っている、それがエロティシズムの役割ではないか、との主旨で配布したものです。

総額1兆円規模の少子化対策、どのくらい期待できる?

(2002年8月27日)

厚生労働省が来年度予算で要求する少子化対策の全容が報道されました。総額約1兆円、地域で子育てを支援するしくみや、男性を含め育児休業がとりやすい職場作りなどの施策が盛り込まれています。

平成9年に発表された人口問題審議会による「少子化に関する基本的考え方について(http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s1027-1.html)」で、経済成長率の低下など主にマイナス面の影響が指摘されているように、少子化は日本にとって重要な問題です。

自分自身が子育てしつつ在宅勤務をしてきた経験から、男女が共同して子育てする環境整備や、地域の協力の中で子どもを育てられるしくみの導入といった対策の方向は、育児の不安を軽減するものとして共感できる点があります。一方で、はたして出生率の向上にどれほどの効果があるか、根本的な疑問を抱きもするのです。

 

東京都高等学校性教育研究会の調査によれば、都内の高校3年生の45.6%が性交を経験済と回答するなど、女子生徒を中心に性交経験率が高まっているといいます。一方で夫婦間ではセックスレスの増加が指摘され、朝日新聞社のネット調査によれば、28%の夫婦がこの1年まったく性交をしていなかったともいう。世の中全体で性欲という本能をめぐる環境が大きく変わっている様子です。少子化の背景には、子育て環境を心配する理性的な判断よりも、こうした本能的な部分に関わる要因が及ぼしている影響が大きい気がするのです。

ニューヨークでは、今年の6月から9月にかけて予定日を迎える妊婦が、例年より3、4割増えているといいます。予定日から逆算していただければわかりますが、9.11の同時多発テロ以降の不安な日々に、愛を確認しあったカップルや夫婦が多かったということです。

それで思い出したのが、『ものぐさ精神分析』などの著書で知られる岸田秀氏(http://www.members.aol.com/shimakaz/kishidaindex.htm)が唱える「性的唯幻論」でした。氏は、人間を性本能の壊れた動物であるとして、本能によって正常な性交をすることができないと指摘しています。そのために、人類文化は幻想に頼って「不能」を克服してきたというわけです。

不能を克服するために築いてきた幻想が異常発達し、本来の性交の目的とは関係のないところで性欲を生むようになったとするとどうでしょう。その反面、本来的な性欲に即した幻想は崩れていく。9.11後のニューヨークのような根源的な問いをつきつけられる状況では、異常発達した表層部分の幻想がはがれ、より本能に近いところで人が愛し合ったのかもしれません。

 

いま、世の中には多くの娯楽があふれているし、ひとりで暮らすことに何の不便もありません。むしろ娯楽を楽しむには、一人暮らしの方が心地よい。そうした、ある意味異常発達した「幻想」が、晩婚化や少子化に与えている影響は、想像以上に大きいような気がします。

そうすると、たとえば子育て支援として金額的な支援をするとして、生活費を補うだけの金額ではめざましい効果は無く、子どもがいないときに享受していた娯楽を犠牲にするだけの魅力のある金額でなくてはならないのではないか。

つまり、少子化対策とは、障害を取り除くだけではなく、現代社会にある娯楽のなかでもなによりいっそう子育ては楽しいのだとみんなが感じるようでなくてはならないのではないか。異常発達した幻想以上に魅力的な子育て「幻想」を提示しなくては、劇的な効果は得られない、そんな気がしてしかたないのです。

小橋昭彦 『今日の雑学+(プラス)』編集長)